アーバンフォレストは日本ではあまり聞きなれませんが、
世界の都市政策の中では最近よく耳にする言葉です。
直訳すれば都市の森林ですが、
都市公園法の都市林という限定的な場所を示すものではなく、
森林のもつ生態系サービスの提供を行っている、
都市及び都市近郊にある全ての樹林を包括して
アーバンフォレストと呼ばれています。
欧米で行われているアーバンフォレストの取り組みとは、
都市の樹木や樹林の環境的価値を高め、
気候変動やヒートアイランド、
都市洪水などに対してレジリエントでかつ生物多様性に富み、
コミュニティを育む、
豊かな都市をつくっていこうとするものです
アーバンフォレストとは
森林による、冷却・省エネ・大気浄化・雨水流出量抑制・野生生物の生息空間などの生態系サービスを提供する、都市および都市近郊の包括的な樹林の概念。
それらの生態系サービスによる便益を高めることにより、ヒートアイランドや都市洪水などの都市災害回避、人々の屋外活動の促進及びコミュニティの育成、生物多様性の確保などの効果があり、都市社会の心理的・社会学的・経済的に安心な環境がより促進される。
対象は街路樹や都市公園の樹林、都市林、工場の林地など、公共や民間の区別なく、また都市から離れた森林を含む場合もある。
欧米では街路樹もアーバンフォレストの要と位置付けられており、数を増やすとともに、樹冠被覆率(canopy cover rate)を高めることが意識されています。樹冠の大きい樹木ほど、炭素蓄積固定、大気汚染物質の除去、冷暖房使用量の削減、野生生物の多様性などの効果が高いからです。また従来のように特定の樹種ばかり植えるのではなく、環境や地域性に配慮しながら樹種を選定し、生物多様性やエコロジーを高める努力が行われています。そして樹木がしっかり成長して二酸化炭素を固定するように、健康な樹木の比率を高めることも重視されるようになっています。
動画で紹介 アーバンフォレストの風景
アーバンフォレストの事例を動画で紹介します。決して特別なものではなく普段の生活の身近にあるものです。みなさんも身近なアーバンフォレストを探してみてください。
根の保護
アーバンフォレストには、大きな樹冠を支えるための根を保護していくことが必要不可欠です。
協会で取り組んでいる根の保護に関する研究内容をご紹介します。
書籍で紹介 緑陰読書 アーバンフォレストを理解する
「街路樹は問いかける-温暖化に負けない<緑>のインフラ-」
(藤井英二郎・海老澤清也・當内匡・水眞洋子,岩波書店,2021年8月)
街路樹の樹冠を最大化し、緑陰による温暖化対策や豊かな生態系を育んでいこうとする取り組みや、海外における街路樹の維持管理事例も詳しく紹介されています。
著者の1人として當内匡関西支部長も、2021年度の日本造園学会賞(著作部門)※を受賞しました。
※著作により造園学の進歩,発展に顕著な貢献をした個人もしくは団体・組織に与えられるもの。
詳細は、公益社団法人日本造園学会のホームページに掲載されています。
地図で紹介 街路樹・アーバンフォレストの名所
街路樹・並木 都市樹木等
街路樹診断協会会員がおすすめする街路樹・アーバンフォレストの名所をご紹介します。
地図は日々更新中です
Webセミナー シリーズ「アーバンフォレストを掘り下げる」
一般社団法人街路樹診断協会ではアーバンフォレスト推進活動として、 みなさまにアーバンフォレストについてより深い関心、理解を持っていただけるようさまざまな取り組みを行っております。その一環として行われたWebセミナーの動画を公開しています。
2024年 4月 18日(木)開催
シリーズ「アーバンフォレストを掘り下げる」webセミナー#06
『<アーバンフォレストの最前線>米国アーバンフォレスト視察とISA(国際アーボリカルチャー協会)カンファレンス報告会』
【参加報告】
■ 上杉 哲郎 (会長)
■ 笠松 滋久 (副会長)
■ 堀内 大樹 (株式会社 八景)
■ 大島 渡 (事務局)
■ 髙田 恵一 (株式会社 エコル)
本セミナーではアメリカ各都市の行政担当者や研究機関の専門家からうかがった都市の緑の管理方法などについて報告するとともに、ニューヨークのリトルアイランドやハイラインなど話題の都市緑地、都市公園の原点セントラルパーク、ポートランドの街並みやグリーンインフラの状況を豊富な写真で紹介しています。
そしてISA(国際アーボリカルチャー協会)カンファレンスの中から、樹木管理の方法や倒木危険度診断の研究などについての世界の動向を紹介しています。ぜひ、ご視聴ください。 (1時間12分)
2022年 2月 25日(金)開催
シリーズ「アーバンフォレストを掘り下げる」webセミナー#03『構造的剪定(Structural Pruning)について』
講師 島田 英泰 氏
(緑生環 技術士事務所代表)
今後、街路樹をはじめとする都市樹木の管理に大いに参考となる内容であり、
アーバンフォレストを生み出すための肝となる
『構造的剪定(Structural Pruning)』について、日本における構造的剪定の先駆者、島田英泰氏にご講演いただきました。
千葉大学名誉教授 藤井英二郎先生にもお話を伺いました。
欧米においては都市樹木剪定のスタンダードとされている、構造的剪定(Structural Pruning)の考え方や基礎、実例について解説しています。ぜひ、ご視聴ください。 (1時間44分)
2021年7月3日(土)開催
シリーズ「アーバンフォレストを掘り下げる」webセミナー『米国のアーバンフォレスト戦略とi-Treeについて』
講師 平林 聡 氏
(米国農務省Forest Service/The Davey Tree Expert Company)
アーバンフォレストを推進する上でも重要な、生態系サービスの定量化や、コミュニケーションツールとして世界的に活用され始めたi-Treeについて、開発者の平林氏に、今回は基本的な部分のデモンストレーションと解説を中心に、ご講演いただきました。
i-Treeの基本を知る機会になります。
ぜひ、ご視聴ください。
(1時間55分)
グリーンインフラ官民連携プラットフォーム
一般社団法人街路樹診断協会は2020年3月19日に発足したグリーンインフラ官民連携プラットフォームの会員になりました。
グリーンインフラ官民連携プラットフォーム専用サイト
https://gi-platform.com/
国土交通省グリーンインフラポータルサイト
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000015.html
グリーンインフラ官民連携プラットフォームの
「グリーンインフラ技術集 令和4年3月版」に、
当協会の「アーバンフォレストによる都市課題の解決」が 推進・計画設計手法として掲載されました。
この技術集は、技術指針の策定や評価手法の開発等に向けた第一歩として、グリーンインフラ官民連携プラットフォームの会員よりグリーンインフラに関連する技術を幅広く収集し整理したものです。
これまでに活用した技術・手法に加えて、今後活用が可能と考えられる技術・手法や当初想定していなかった成果でなくてもグリーンインフラに類する取組において、多面的に機能・効果を発揮した技術・手法についても幅広く対象とされています。
グリーンインフラ官民連携プラットフォーム「グリーンインフラ技術集 令和4年3月版」はこちらよりご覧ください。
「アーバンフォレストによる都市課題の解決」は13ページに掲載されています。
https://green-infra-pdf.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/GI_technicalEX04.pdf
2019年5月20日(月)東京・22日(水)福岡・24日(金)大阪
国際シンポジウム「世界のアーバンフォレスト政策と樹木マネジメント」
~世界の潮流に学ぶ都市樹木のあるべき姿とリスクマネジメント~
東京の表参道、仙台の定禅寺通り、大阪の御堂筋など、日本にも環境的価値の高い街路樹はありますが、多くの通りでは強く切り詰められているのが現状です。電線がある、歩道が狭いなど、樹冠を大きくできない条件が多くあります。
ただ電線が地中化され歩道が広くなった場所でも、街路樹が逆になくなっている場所が多く見られます。
また管理費の削減のために、多くの通りでハナミズキなどの大きくならない樹木が植えられるようになってきています。
日本の街路樹の現状は世界のアーバンフォレストの潮流とは逆の流れとなっているといえます。
街路樹診断協会では、これからの持続可能な社会のために、日本におけるアーバンフォレストの取り組みを推進し、これからの街路樹のあるべき姿を追求し、社会に発信・変革していくことが、街路樹に精通した我々の役割であると思っています。
2019年、その最初の取り組みとして、シンポジウム「世界のアーバンフォレスト政策と樹木マネジメント」を開催させていただきました。今後もこの取り組みを継続してまいります。