街路樹診断士について
1. 街路樹診断士の背景
街路樹診断協会は、1998年(平成10年)にVTA(ビジュアル ツリー アセスメント)手法を用いて倒木の危険がある樹木を事前に発見し、適切な処置を施すことを目的に設立されました。
我々は、協会活動を通じて道路交通の安全を守り、健全な街路樹を育てることに寄与していると自負しております。
当協会が定着を図ってきました、「樹木のリスクマネジメント」に関する技術は、協会員の絶え間ない診断方法の普及活動と研修会や出版を通しての技術の平準化への取組みによって、国道をはじめ日本各地の主要道路で用いられるようになりました。
また、これら技術は街路樹にとどまらずに、公園の樹木など都市樹木(Urban Tree)全般に用いられるようになりました。
しかし、その半面で、協会が行なった技術の普及と平準化への取組みが弊害をもたらしました。
実務経験の浅い樹木医が当協会のマニュアルを用いて、安易に診断を行っている事例が一部で見られるようになりました。
この状況を放置しておくと診断技術の劣化を招き、街路樹診断協会が築き上げてきた社会への信頼を失うことになりかねません。
街路樹診断協会は、樹木のリスクマネジメントに関する専門家集団です。
よって、我々は専門的な知識と技術を持つ専門家として、人と都市樹木の共生に向けた活動を通して、社会に対する信頼性と診断技術の信頼性をより高めることを目的として「街路樹診断士」認定制度を発足いたしました。
2015年3月には道路緑化基準が改訂され、
道路管理者は「樹木等の管理にあたっては、道路巡回や道路利用者からの道路の異常等に関する情報の活用により、道路交通への支障や道路使用者等の危険の未然防止に努めなければならない。」と規定されました。
都市樹木のリスクマネジメントに長けた専門家が求められています。
2. 街路樹診断士の位置付け
街路樹診断士(以後、診断士という)は、本協会会員の樹木医で、一定レベル以上の診断技術に達していると認定され、さらに登録した者に与えられる名称です。
樹木医は、樹木の診断及び治療・後継樹の保護育成並びに樹木保護に関する知識の普及啓発と指導を行なう専門家です。
その中で診断士は、樹木医が持つ専門性のうち都市樹木を対象とした診断の知識と経験を有する者です。
診断士に求められる知識は、樹木に関わるもの以外に都市樹木に関わる法規や役割など多岐にわたります。
診断士の役割は、協会が定める「街路樹診断マニュアル」に基づき、専門的な観点から総合的に樹木診断を行なうことにあります。
3. 街路樹診断士の今後
街路樹診断士の認定は2010年から行われており、2020年現在で210名を認定しています。
2019年までの樹木医資格を有する者が2,834名いることから、街路樹診断士は希少な資格と言えます。
都市樹木のリスクマネジメントに長けた専門家の育成は、協会の重要な責務と考えています。
但し、安易に数を求めるのではなく、認定の厳正化による「質」の確保が必要と考えています。